家具工房の風景

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開業から3か月、家具工房としてはまだまだほんの駆け出しですが、ここ下関市菊川町の工房で毎日作業していますと
いろいろな事があります。
工房の周りはほぼ田圃で、20数軒の家が広い範囲に点在しています。私が開業の挨拶に回ったとき町内の範囲が一
体どこからどこまでなのか分からず困りました。またほとんどのお宅が農家ですから昼間各家庭をまわっても誰もいませ
ん。かといって何処の田圃にどなたが居るやらサッパリで何度も回り、それでもお会い出来ないお宅には仕方なく玄関
に挨拶文と粗品を置いて帰りました。それでもこの竜王地区には私以外にも鉄工所や工務店などもあり、また菊川町全
体で見ると布工房、きもの、陶芸などほかにも脱サラ農家と様々な方がおられます。
そのうちいろいろな工房を訪ねてみたいと思います。
私の自宅は旧市内にあるため毎日通っていますが、勤め人の時は朝夕の渋滞に通勤時間が40分位かかっていました
が、当時より距離は長くなりましたが今は、時間が半分で済みます。通勤に使う県道の周りはのどかな田園風景で窓を
開けて走っても排気ガスの臭いに苦しむ事もなく走れますが調子に乗っているとスピード違反の検問にひっかかってし
まうので要注意です。
勝手な事をタラタラと書きましたが、こんな調子で続けてみたいと思います。興味があればお付き合いください。

  2007年9月15日            つづく

朝の通勤時の写真です。


自治会集会

工房建設中の4月に竜王地区の自治会の集会がありその席で自治会の方々に私の事を紹介したいので集会に参加し
てほしいと自治会長さんから連絡をもらい、会に参加しました。
会では前年度の会計報告や新役員の紹介、年中行事についてなど話は進み、私も准会員として紹介されました。出席
された人数は20数名と少数ですが、代々この土地で農業をされてこられた方がほとんどですから旧市内とは違いまとま
りを感じました。会では、地元のこれからの農業について熱く議論され次第に激しくなると、農業とはまったく関係の無い、
まして自治会長さん以外初対面の私はなんだか居心地が悪く、会場の隅で居たたまれない思いでした。

  2007年9月16日            つづく

通勤途中にある内日(うつい)
貯水池


水神祭

5月に入ると工房の周辺では草刈り機の音が響き田植えの準備に忙しくなってきました。そんな中私も工房の周りの草を
刈りましたが、草刈り機など持っていないので鎌を手にひたすら刈り続けました。普通の雑草は簡単に刈れますが、よし
(よしずの原料)は堅く刈り取るのに苦労しました。また、この時期にある水神祭という神事に呼ばれ神事の後の懇親会で
は町内の方々と和やかに触れ合うことができました。この日右の写真にある竹に半紙を刺したもの(名称が分かりません)
と小さなパックに入ったご飯を貰いました。どちらも神事で使われたものです。ご飯は自宅に帰り神棚におそなえして翌朝
頂きました。冷や飯になっても大変美味しかったです。竹に刺した半紙は縁起物だからと翌日工房の柱にかざり今もありま
す。工房が田舎にあるので今まで知ることもなかった農家の暮らしや習慣を知る事も以外に楽しいですよ。

   2007年9月18日           つづく



水神祭で頂いた縁起物?


工房の住人?

私は毎日工房に通っていますが、住み着いている生き物がいくつかいます。研ぎ場にはアマガエル、その下の古い基礎の
下にはシマ蛇がいます。カエルはとてもきれいなミドリ色で後ろ脚がかなり長いのです。その長い脚を上手にたたみ前足を
あごの下で重ねジッとしています。顔をかなり近づけても慌てる様子もなくジッとしたままです。
シマ蛇は普段は基礎の下のブロックの穴の中にいますが、時々外に出ていますから研ぎ場に行くとバッタリ出会う事があり
ます。多少ビックリしますが、向こうも私に気づくとソーッと居なくなります。そもそも向こうの方が先にこの場に居たのでしょ
うから出て行けとは言えません。
それから裏の小さな林の中にキジがいます。ときどき出てきて鳴きながらウロウロしています。この間目が合ってしばらく見
つめあってしまいました。よくケンケンと鳴き声を表現しますが、私にはそのようには聞こえません。どちらかといえば犬の鳴
き声に似ているように感じます。
梅雨時期にはムカデが何度か出ました。これはいけません問答無用で死んでもらいます。

    2007年9月19日          つづく 

研ぎ場のアマガエル数匹います。


木取り

工房の仕事は家具作りです。お客様からご注文を頂いたら図面を書きます。お客様の希望する寸法、棚板の間隔や枚数、また収納する品物の大きさ、そしてデザインなど。無垢材で作るわけですから仕口も考えなければなりません。図面といっても私の場合方眼紙に書く程度のものです。図面が出来たらその寸法を杖に原寸で盛りつけます。幅、高さ、奥行、見つけ見込の寸法、裏板の厚みなど必要なものはすべて盛りつけます。以後はこの杖をもとに作業を進めていくわけです。この杖は盛り付け棒とか尺杖などと言われているようです。寸法が決まれば材料を作らなければなりません。木目や色合い、反りなどを見ながら
木材を選ぶわけです。同じ材種でも色合いや木目は違いますからどの部分を何処で使うか決めて木取りをして行きます。そして出来るだけ無駄が出ないように、他にもいろいろなことを含めてよく考えて作業を進めていきますが、実は私はこの作業が大嫌いなのです。優柔不断な私は材料を選ぶのにかなり時間がかかります。なにしろ刃物を入れたらもう後戻り出来ないわけですから、また部材が多くなると数を間違える事があります。いざ墨付けの段階で足りない事に気づいたらまた最初からやり直しです。時間の無駄ですしなによりもガッカリしてその後の作業に影響します。順調に作業が進めば気分もノリノリで一人しかいない工房でヨッシャーッと叫んでいますが、そうそうありません。

     2007年9月20日         つづく

墨付けが終わった材料


加工

墨付けが終われば、ホゾ穴を掘りホゾを作り小穴を突いたりと加工して行きます。機械で出来る事は機械でやります。部材の大きさや加工する部分の位置などの関係で機械が使えない場合は手作業になります。手作り家具でも機械は使うのです。
機械を使っても最終的に手道具による加工が残ります。それらの加工が終われば、ホゾとホゾ穴の組み合わせを間違えないように印を付けます。これをやらないと接着剤を付けた後で組み合わせが分からなくなったりしたら慌てたあげくに間違えて組立てしまいます。次に各部材をぬれたウエスで拭いて行きます。加工の途中でついた部材のへこみキズなどはこれで戻ります。
へこみが大きい場合はぬれタオルを置いてその上からアイロンを当てるとだいたいのものは戻ります。
ぬれた部材が乾いたらカンナで仕上げていきます。鏡板などのように組み立てた後で仕上げられない部材はカンナ仕上げの後サンダーで塗装の時のために素地を整えておきます。こうして書いていくとアッという間ですが、組立作業に入るまでにはかなり手間がかかります。

     2007年9月21日         つづく

角ノミ盤でホゾ穴を開けます。


組み立て

組み立てにかかる時は必要なものはすべて用意して手際よく作業が出来るようにしておきます。板はぎ作業の時もそうですが
接着剤を塗ってからあれこれ慌てて探していたのでは思うように作業できません。
ホゾ穴に接着剤をしっかり塗ってねじれや角度に注意しながらゲンノウで少しずつ打ち込んで行きます。胴つきがピッタリ着いた
のを確認してハタガネやクランプで締め付けて接着剤が乾くまで固定しておきます。
以前ホゾとホゾ穴に印をせずに組立を行い間違えて組んでしまい慌てた事がありましたが、組立よりもバラスほうがはるかに大変な作業でしたから以後気をつけています。

     2007年9月22日         つづく

組み立て終了


仕上げ

出来るだけ組立を行うのはその日一日の最後の作業になるように進めていきます。組立が終わりその日一晩接着剤が乾くまで
固定して翌朝ハタガネを外し次の作業に取り掛かれますから、手待ちになりません。また、ハタガネには必ず当て板をします。
ホワイトオークや楢などはハタガネの金属部分が直接材料に触れないように気をつけます。水分や接着剤などを通して黒く変色をしたりしますので要注意です。ハタガネを外したら目違いをカンナで払い、サンダーで素地の調整を行い塗装にかかります。
写真は靴箱ですから、建具の切り込みをして同様に塗装にかかります。
とにかく一つの家具を作るのに木取り、墨付け、加工、組立と確認作業の連続です。あまりくどくやる事はありませんが、流れに乗って勢いよく作業が進んで行くと思わぬ間違いをおこしてしまう事があるので要注意です。
作業が終盤に差し掛かって間違えでもしたらそのショックから立ち直るのにそうとう時間がかかります。もしそれが取り返しのつかない致命的なものならと今考えただけで背筋が冷たくなってしまいます。クワバラ、クワバラ。

     2007年9月23日         つづく

天板を取り付け、棚板を切り
込んでこの後建具を切り込みます。


塗装

木の工房やまねでの塗装は、オイルフィニッシュとウレタン塗装の二通りの塗装が出来ます。どちらの塗装も一長一短ありますから、家具の種類やお客様のお好みに合わせて選んで頂きます。
オイルフィニッシュでは塗膜を作らず木材にオイルをしみこませる方法で塗装をしていきますから、無垢の木の肌ざわりはウレタン塗装では感じる事が出来ないものがあります。ウレタン塗装では木材の表面に固い塗膜が出来ますからオイルフィニッシュに比べ水や傷に強くなります。
オイルの場合は刷毛で塗りウエスで拭き取っていき、ウレタンの場合はスプレーガンでの吹き付け塗装ですが、いずれも途中で研磨を繰り返し仕上げていきます。写真の靴箱はオイル仕上げです。

     2007年9月24日         つづく

塗装が終わり完成です。


菊川町の米は美味い!

前にも書きましたが工房の周囲は田圃が多く、9月下旬のこの時期は稲もこうべを垂れて刈り入れを待つばかりといった状態です。私の自宅の周辺にも田圃がありますが、菊川町と違いすでに稲刈りが終わった田圃も多くあります。自宅がある場所と比べると菊川町は標高が高いせいもあるからでしょうか、まだ稲刈りが終わった田圃は少ないようです。
工房の裏の田圃でお米を作っておられる方から以前お米を頂きましたが、じつに美味しかったです。水神祭でもらったお米と
同様に冷ごはんになってもモチモチとして、食味もよく家族で関心しきりでした。普段から手間暇かけた菊川町のお米はとても美味しいですよ。

      2007年9月25日        つづく

工房の前の田圃
写真を撮ったのは8月です。


バス停

工房の前にバス停があり一日に何度かバスが止まります。開業当初は何時バスが止まっているのか気がつきませんでした。そもそもバスなど本当に通っているのか疑っていたのですが、ある日バスに気づきちょっと笑ってしまいました。普通にバスを想像していたのですが、目の前にあるバスは大きめのワンボックス車でした。そして最近不思議な事に気がつきました。
バスは一日に何度か止まりますが、バス停でバスを待つ人を見た事がありません。そしてバスが止まったのに気付いて外に出て確かめてもバスが走り去った後のバス停に人はいません。そんな風に思っていたら先日工房の玄関の前にバスが止まり運転手さんが工房の様子を見ています。運転手さんは工房の事が以前より気になっていたらしくバスから降りて工房の中で少しお話をしました。その時バスの利用者がいるのか尋ねると、「おるよ」との事。でも見た事が無いと聞くと「手を挙げた所で
乗せる」なるほど、菊川町は平和です。しかし誰も乗り降りしないバス停に何故停まるのでしょうか?

      2007年9月26日        つづく

バス停
内回り竜王と書いてあります。


赤い花

工房の周りを見渡すと、田圃のあぜ道や裏の空き地などいたるところに赤い花が咲いています。ちょうどお彼岸のこの時期お
墓参りに行ってもよく見かける彼岸花です。田圃の稲の黄色の中で鮮やかに咲いています。この花の球根や根には毒があるそうですね。そういえば子供のころ毒があるから触らないように言われた事を覚えています。モグラや野鼠などに田圃のあぜを掘
らせない様にするために植えているという話があるそうです。それにしても変わった形の花ですよね。色もどちらかといえばドギツイ感じがします。動物なども毒を持っているものは姿が派手で自分の存在をアピールしているようです。毒といえば、先日所用で帰宅が遅くなり深夜に駐車場にトラックを入れて歩いて自宅に向かう途中道の真ん中でハミ(私の地元ではマムシの事をこう呼びます)がくつろいでいる所にバッタリ出くわしてビックリしました。マムシはシマ蛇や青大将などと比べ体長が短く胴からシッポにかけて急に細くなります。色は派手な色ではありませんが、五円玉の様な模様がついています。そしてなにより顔です。エラが張って噛む力がいかにも強そうです。以前は自宅の周りも田畑が多かったので昼間でも見かけていましたが、最近は宅地造成が進んだので見かけなくなっていましたが、夜になると出てきてノンビリしているのでしょうか、気をつけなければなりません。
彼岸花から話がそれてしまいましたが、マムシにはくれぐれも気をつけましょう。人の姿に気がついても慌てて逃げないヘビは要注意ですぞ!

      2007年9月29日        つづく

工房の前の彼岸花


雑草

雑草には本当に困ったもので、刈っても刈ってもすぐに生えてきます。最初のうちは鎌を手に刈っていましたが、時間と手間を取られ困ってました。農家の人に「除草剤をまいたらええ」と言われホームセンターへ買いにいきましたが、これがまた種類が多く価格もピンからキリまでかなり差があります。近所の人の言うことには葉から吸収して根まで枯らすタイプの物が良いとのことでした。このタイプの物は土の中で薬が分解されて残らないために土を悪くしないので安心して使えます。さっそく購入して園芸用のジョウロで撒きました。水で希釈して使用するのでかなり広範囲に散布する事が出来ます。散布の後6時間以内に雨が降ると効果がおちるそうです。2、3日すると変色するものもありますが、全体が枯れるまでには2週間以上かかります。私が購入した除草剤が悪かったのか、完全に枯れない頑固な奴もいました。ほとんどの雑草が枯れてスッキリしますが、雑草とは本当に逞しくしばらくするとまた生えてきます。そしてアッという間に生い茂ります。このイタチごっこのために今後どれほどの時間と除草剤を使うのかと思うと頭が痛くなりそうです。

      2007年9月30日        つづく

生い茂る雑草

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